宿の主人は人付き合いが苦手!?
熊野市郊外にある旅の宿はるさめは、オーナーさんが自分で手を入れながらご夫婦で切り盛りするスタイルの小規模ホテル。すべての部屋が独立していて、電話の声など隣の部屋に気を使う必要がないのがうれしいですね。でもそんなオーナーさん、じつは接客が嫌いなんだそう。ええっ? なんで?
熊野市郊外にある旅の宿はるさめは、オーナーさんが自分で手を入れながらご夫婦で切り盛りするスタイルの小規模ホテル。すべての部屋が独立していて、電話の声など隣の部屋に気を使う必要がないのがうれしいですね。でもそんなオーナーさん、じつは接客が嫌いなんだそう。ええっ? なんで?
もともとは家電メーカーで修理の仕事をしていたという萩原さん。脱サラして熊野市駅前で電気店を経営しながら、今ではこのホテルの仕事がメインになってしまったそう。
「父が死んで自分が経営を引き継いだ形ですね。やりたくなかったんですけど、仕方なく(笑)。最初は経営状態もボロボロで、借金だらけ。お客さんにもこんな宿泊まりたくないって言われるような状態でした。でも僕もともと技術屋なんで、水道から電気からなんでもできる。それでお金貯めては直してを繰り返して今の状態にして、やっと借金も返せたんです」
DIYで宿をリノベーションしちゃうって、すごーい!
「好きなんです。中古の家を買って、自分でリフォームして貸したりしてます。ほかにも最近、小さな農地を買って農業始めたり。農業って奥が深いんですよー。土壌のこととか勉強しながらやるのが楽しい。耕運機を買いに行ったりね」
ホテルの仕事は楽しいですか?
「いやー、楽しいと思ったことはないかな。僕、昔から人の好き嫌いが激しくて、電気屋でも気に入らない客には売らなかったりしたくらい。人付き合いがあんまり好きじゃないんです。ホテルの接客はせいぜいチェックインのときの3分間くらいでしょ。だから我慢してるんです、大人だから。3分なら我慢できる(笑)」
サイクリングのお客さんはどんな方が多いですか?
「自転車に乗ってくるお客さんは上品な方がほとんどですね。レベルが高いっていうか、きちっとしてるっていうか、人間ができたっていうか。マナーもすごくいい。だからそういう人にはいっぱい来てほしいなと思いますけど。マナー悪い人も多いんです。以前は宿泊料金ももっと安かった。でも安いとマナーの悪い人が来る。そういう人とは話したくない。それでリフォームしてきれいになったし、値段を上げたらマナーの悪い人が来なくなった。ああよかったなあと(笑)」
敷地には猫がたくさんいますねー。受付に置いてある宿の案内にはそんな猫の紹介まで!
「隣の家のお婆さんのとこが猫屋敷だったんです。避妊手術しないんでどんどん増えてしまって。お婆さんが亡くなってから、しょうがないから僕が避妊手術して。たくさんいたので100万円くらいかかりましたね」
100万円!? そのお婆さんのために避妊手術を?
「いや猫のために。ウチにはウチで飼い猫が5匹と犬が1匹いるんです。あとは野良。野良でも世話はしてやらないといけないし、大変なんですよ病気とかすると。仕事休めるのは日曜しかないから、日曜だと松阪の病院まで連れてってやらなきゃならないし。一日がかりですよもう。お客さんも可愛がってくれててチャオチュールを自分で買ってきて与えてくれてたんだけど、あれセットで買うと高いんで、フロントでバラ売りしてます」
モノや生き物にかかわらず、あれこれ手をかけたりコツコツやるのが好きなんですね。
「うーん、そうかもしれませんけど……。でも正直サイクリストにやさしい宿に指定してもらったんですけど、こんなとこで代表としてインタビューされるような立派な宿じゃないし。そもそも自転車のことも全然わからないから、知り合いの自転車やってる人にいろいろ聞いて。自転車がいくらするかも知らなくて、10万円くらいかと思ってたら高いのは100万円もするって。そりゃ愛着があるのもわかるから、外には置きっぱなしにしたくないだろうと思って部屋の中に入れてもらうことにして。サイクルスタンドが必要だっていうからネットで部屋の数だけ買ったら、合わない自転車があるってことで買い直して。そしたらそれもダメで、これはあかーん、これもあかーんって、使えないものがいっぱいになってしまって(笑)。それで今のものに落ち着いたんですけどね。空気入れも、なんか聞いたら口金の種類が3つあるってことだったので、3本買ったんですけど。え? 1本でいいんですか?」
萩原さん、お客さんのことめちゃくちゃ考えてるじゃありませんか(笑)!
「いや全然なんです。正直な話、あんまり忙しすぎるのも困るし、嫌いなお客さんの相手するのも嫌だし。ハッキリ言ってお客さんのためになにかやってるってことは一切なくて。でも一応観光業ですからどうすれば熊野市や地域に貢献できるかとかは、少しは考えてて。ほら、こういうの(手作りの宿案内)を自分で作るのも好きなんですよ。このあたりの観光案内入れたり、近所の食事処を紹介したり。あと猫のことを書いてみたり、釣りのお客さん向けにこのへんの魚のこととか。ついでにちょっと釣りを楽しみたい人向けに釣り竿を貸し出したり。そうなると釣りの人には魚をさばく場所があったらいいのかなと流し台を置いてみたり。あと自転車の人には洗車する場所が必要なのかなとか。お子さん連れで来たときに田舎だから星がキレイだから望遠鏡あったら楽しんでもらえるかなとか、それと……」
ホテルの仕事や接客が嫌いという萩原さん。絶対ウソだと思いました。
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