人生やりたいことだらけだよ!

熊野古道の始神峠近くにある始神茶屋 楢。寿司・和食職人として修業したご主人が腕をふるう郷土料理レストランに併設する形で、こじんまりとした宿も経営しています。まだ開業して数年という小綺麗で清潔な宿。でも泊まってみたら、そのご主人、楢井さんの個性爆発なトークに思わず引きずり込まれてしまいました!

寿司・和食職人が腕を振るう食事も絶品

始神茶屋 楢

ご主人はZⅡ乗り

「いらっしゃーい!」とニコニコ出迎えてくれたご主人の楢井義久さん。でもすぐにこの宿(とレストラン)がフツーの宿ではないことに気付かされました。自転車はそこに入れてもいいよと言われた小さな建物の中に、古いオートバイが大切そうに保管されてるのを見てしまったんです。

そこにはオートバイ以外にもラジコン、プラモデル、オーディオ、古いレコードなどが所狭しと詰め込まれていました。これって楢井さんの趣味部屋!?

「あれはカワサキのZⅡってやつ。単車は16歳から。最初は小さいバイクだったね。でもいつかはZⅡに乗りたいってのがあって、大人になってから手に入れたんだ」

若い頃はオートバイで走り回ったという楢井さん。週に一度の休みはほとんど走りに行っていたそう。

「週イチで走って年間2万kmは走ったかな。鈴鹿で修業してたときだから、日帰りで神戸とか能登とか。30年くらい前にZⅡ乗りのクラブを作ってね。今でも年に1回、100台くらい集まるイベントをやってる。単車に乗ってなかったら、今みたいに日本のことを知らなかったかもしれないねえ」

4畳半くらいのスペースに趣味のグッズがぎっしり!
ご主人の楢井義久さん。趣味の話が始まると止まらない

ボディランゲージでOK

どんなお客さんが多いんですか?

「今、インバウンドっていうの? 海外からの客さんが3~4割いて。英語? 中学で習った英単語を並べるだけ。それと身振り手振りでだいたいなんとかなる。大事なことはスマホの翻訳ソフトを使うけど。でも単語並べるだけでなんとかなってますよ。そうしたほうが楽しいし。海外のお客さんも楽しんでるよ。海外のお客さんとの会話ってだいたい同じやからさ。今日はどこから来たのとか、明日はどこへ行くのとか。で、それで長文で返されたら……わかりません、って(笑)」

お客さんもそうやって熱心にコミュニケーションとってもらえたら、うれしいでしょうね!

「時間があるときはさ、近くに権兵衛の里ってとこがあるんですけど、そこにクルマで連れてってあげる。そこは池に鯉がいっぱいいてね。餌をやるとすごい寄ってくるんで、海外のお客さん大喜びですよ。鯉って歯がないから水に指を入れてパクっとされても痛くない。それも面白いみたいね」

宿泊は洋室が2つのみ。清潔でゆっくり過ごせる
共同の風呂・洗面所まわり

奇跡の5円玉

僕こういうの作ってるんですよ、と楢井さんが見せてくれたのは5円玉に糸を通したお守りのようなもの。

「こういうの作って海外のお客さんにプレゼントしてるの。5円=ご縁っていう意味なんだけど、海外のお客さんにそれを教えるのが難しくてさ。言い換えるいい単語がないんだよね。でね、このあいだすごく驚いたことがあってさ。オーストラリアから来たカップルのお客さんなんだけど、僕が5円玉をプレゼントしたら、彼氏のほうが5円玉を自分のバッグから外して見せてくれて。なんで持ってるの!?って聞いたら、それは彼がオーストラリアで手に入れて、あちこち海外をずっといっしょに旅してきたもの。ご縁の意味も知らずに持っていた。それが日本に帰ってきた。こんなことってある? オーストラリアに5円玉持ってる人、何人おる? それが日本に帰って来る確率って何%? しかも旅行者に5円玉あげてる人が日本に何人おる? それが出会うって、考えたらすごい確率やよねー! だから交換したの、僕があげた5円玉と。僕もカバンに付けてずっと持ってるからなーって」

自転車は趣味部屋(笑)に入れても営業終了後にレストランに置いてもいい
夕食は熊野灘の海の幸や特製の唐揚げなどが食べ切れないほど並んだ

ダンシングオールナイト

お話していたレストランの片隅にはアコースティックギターが。ここでギターを弾いたりするんですか?

「僕が弾き語りで。海外のお客さんが来てここで食事すると、必ず日本の古いフォークソング、民謡を歌ってあげて。あとは自分が好きだったフォークソングとか日本のロックとかを歌ってあげる。盛り上がるよー。ここで初めて自分が楽器やっててよかったなと思ったよ(笑)」

どんな曲をやるんですか?

「いつもやるのは竹田の子守唄。悲しい歌ですね、歌詞わかんないけどすごくいいですねー、って言ってもらえる。あとは僕の大好きなもんた&ブラザーズのダンシング・オールナイト(笑)。その落差に驚かれるのが面白い(笑)」

へーっ! どんなふうに歌うんだろう?

「じゃちょっとやってみましょうか!」

そこから楢井さんオンステージの始まりー(笑)!

楢井さんは人を喜ばせるのが好きなんですねー。

「そーやな人の笑顔が好きやなー。人に喜んでほしい、喜ぶ顔が好き。親がそういう、人を集めるのが好きやったもんで血を引いたのかなー。みんながハッピーになってくれれば自分もハッピーになれるなー」

食事をしながら楢井さんとの話が弾む
ダンシンオールナイっ!!

人生やりたいことだらけ

バイク、ラジコン、音楽と多趣味な楢井さん。どうしてそんなに多くの趣味を?

「なんでかなー。やりだすと熱中してしまうんよね。熱中すると投げださないから、次から次へと趣味が増えてしまう。剣道も毎週稽古してるしね」

自転車、乗りましょうよ!

「じつは単車に乗る前、子供のころは自転車も乗ってたんよ、ウインカー付きの(笑)。自分でタイヤ替えたりしてた。単車と同じ旅の道具だしね、嫌いじゃないよ、自転車(笑)」

そのうちハマりますよ!

「ハハハッ! でもこないだ乗ったんだけど電動アシストならはまるかも。でもさっそく調べてみたら、えらい高いなーって(笑)」

もうその気になってるじゃないですか!

「あとウクレレもやってみたいかな、あ、あとオカリナね。70年代フォークにはオカリナがつきもんだから、やってみたいねー」

楢井さん、人生を楽しんでますね!

「どうなんかなー。時間がなくていろいろできないから、イライラもするんだけど。でも趣味がない人って早死にするらしいね。やることなくなって。俺なんかしたいことだらけだからさー(笑)!」

人生が楽しくてしょうがない。そんな楢井さんにパワーをもらいました!

翌朝、秘蔵のレコードを見せてもらっていたらまたもライブ勃発!
お店の扉には「東紀州サイクリストにやさしい宿」のステッカー

こちらを読んで気になった方は
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